グラン・トリノ

DJポチ

2009年05月02日 19:54



朝鮮戦争の帰還兵ウォルト・コワルスキーは
フォード社を退職し、妻も亡くなり
マンネリ化した生活を送っている
「無名の俳優を起用した作品は
イーストウッドと若手のやりとりに注目」

朝鮮戦争従軍経験を持つ気難しい主人公が
近所に引っ越してきたアジア系移民一家との交流を通して
自身の偏見に直面し葛藤する姿を描く

イーストウッド演じるウォルトは
米国人としては、保守的な人物。
親としては、昔堅気な頑固で偏屈な人物。

差別的な言葉や
今どきの若者を受け入れない態度

フォード社で働いた過去は
物づくり社会のすばらしさを体験した当事者

朝鮮戦争での戦争体験は
終わりのない正義の戦いで傷ついた良心

その彼を取り巻くのは
東南アジアから移住してきた人々

アメリカで蔓延する
時代の変化に取り残された人々の
怒りの代弁者として存在している

最後に頼るべき牧師が
神学学校を卒業した若造と
全くやりきれない状況なのだが

その老人の家庭環境は
息子夫婦から煙たがられ
老人ホームを勧められたことに激怒する
シンプルで日本人にもわかりやすい

イーストウッドは
時代の流れを否定せずに
米国の現実を物語として描き出すが
悲観すべきことと結論づけてはいない

父親のいない、モン族の少年タオとの交流で
東洋人から何かを学ぶだけでなく

米国はまだ、彼らに伝えるべきことが
存在することを示した

その象徴たるのが
物づくりであり、ガレージにある
沢山の工具類の存在である

銀行やら証券やらITやらで
失敗した米国に
まだ残っているものがあると言っている

それらをユーモラスに描くスタイルが
この映画の魅力のひとつだが

彼らの友情を深めてゆく姿は
最近観た米国映画では一番面白かった

そして、もう一方の問題である
暴力には、暴力で対抗するという
終わりなき悲劇のスパイラル

タオは同じ民族のギャングから
しつこい嫌がらせを受けていたが

そこにイーストウッドが
暴力という形で介入してしまう

お分かりように、ベトナムをはじめ
民族同士の争いに介入し続ける米国で

それが、予想通りの悲劇的な結果を生みだす

ここでのイーストウッドの後悔の念こそが
大戦を経験した後の米国人の率直な思いだろうが

タオはギャングに復讐することを
あの、イーストウッドに執拗にせまる

そのイーストウッドがだした結論は
我々の想像を超えた、ラストシーンを生み出す

米国のような復讐にみちた行動を
手本としてはならないと
最後に伝えたかったのだろうと思う


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