ＤＪ犬による映画雑談

「ビールを飲みながら「８０年代最高ー」と
叫ぶランディに、私も共感した」

ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞

ミッキー・ロークが中年の悲哀漂う
プロレスラーの光と影を見事に演じ
アカデミー賞にもノミネートされた

この映画を１００％楽しむ為に
知っておいてほしいことがある

主役のランディを演じた
ミッキー・ロークは８０年代に活躍し
その人気は日本にもおよんだ俳優で

現在の姿からは想像もつかないが
セックスシンボルとして女性から
キャーキャー騒がれたプレイボーイだった

自信のワガママな性格やプライベート問題から
９０年代は人気が下降して
一度は表舞台から追いやられてしまう

ダーレン・アロノフスキー監督は
主役のランディと彼の人生を重ね合わせ
ミッキー・ロークの起用にこだわった

それに納得がいかないスタジオ側は
この役にニコラス・ケイジを起用しようとするが

友人のミッキーのためならと
ニコラス・ケイジは
自ら役を降板して男をみせる

一連のゴタゴタに、ご立腹のスタジオ側は
予算の削減と公開規模の縮小などで
この映画を見限った

これらのことを聞いて
あのミッキー･ロークでも
感激で胸をうたれないわけがない

彼はキャリア最高の演技で期待に答え
映画は傑作として、世界中で評価された

映画で監督はドキュメンタリーのような映像で
ランディというレスラーの生活を追っていく

リングの上では仲間に囲まれ
人生の目的をみいだせる彼だが

一度リングを降りたら
友人も家族もいない、孤独な生活を送っている

なんせ、冒頭でいきなり
家賃滞納で、家から追い出されて
車中で一夜を過ごすシーンがある

この映画は、生々しい現実を再現し
夢のような幻想を徹底排除している

ゆえに、レスラーとしては
観衆の夢を期待どおりに演じる
ショーとしての演出が生きてくる

ロッカールームでのレスラー仲間との
会話のシーンは一番明るく楽しい

その彼を突然の不幸が襲う

ここからは一変し、レスラーを引退して
普通の生活に戻ろうと努力するランディ

孤独に悩まされ、不安を覚える彼の姿は
どの人でも共感できると思う

スーパーのレジ係という仕事をこなしながら
ひそかに思いを寄せる女性との恋と
最愛の娘との関係の修復を
不器用ながらもはじめるが上手くいかない

再びリングにたつという彼の行動は
自分などどうなってもいいと
やけくそになることだったが

最後に彼女の告白を蹴ったのは
ファンの声援を聞いたときに
レスラーとしての性分を思い出したのではないか

彼女と娘に認めて欲しかったのは
レスラーとしての自分であって
普段の自分や父親としての自分ではなかった

最後の最後にチラッとカーテンをみた
ランディの思いは、彼女には届かなかった

戦う男の美学はキズがつきまとう

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